プレミアムジムのデザイン
ジムづくりとは、アート(感性)とサイエンス(理論)を融合させた、繊細なバランスの上に成り立つプロセスです。美しさと機能性が交わる場所に、魅力的で効果的なトレーニング空間が生まれます。
私はこれまで20年以上にわたり、ジムの設計・トレーニング・コーチング・運営に携わってきました。その経験から言えるのは、優れたジムは初心者から上級者、入会を検討中の人、そしてパーソナルトレーナーに至るまで、すべての利用者に応える設計になっているということです。
成功の鍵は、ブランドの価値観に合った製品とゾーン設計、そして収益性を最大化する空間の最適化にあります。一方で、設計の悪いジムは雑然としており、利用者に「敷居の高さ」や「居心地の悪さ」を感じさせてしまいます。逆に、よく考え抜かれたジムは、会員に自信と一貫性を与え、トレーニング意欲を高めてくれます。
ジム経営者・運営者にとって重要なのは、レイアウトやマシン配置、ワークアウトゾーンの構成が会員体験にどんな影響を与えるかを理解すること。目指すべきは、訪れるたびに「ここでトレーニングしたい」と感じさせる、居心地のよい高機能空間です。
あらゆるタイプの会員に応える設計
インスピレーションを与えるジムレイアウトは、さまざまなタイプの会員を想定して設計されるべきです。
初心者向けゾーン:明るく開放的な空間にわかりやすいサインを配置。マシンは直感的に使えるよう設計し、軽いコーチングを受けられるスペースを近くに設けましょう。
上級者向けゾーン:ヘビーウェイトや特定部位を狙うマシン、スクワットラックなど、より高度なトレーニングを可能にする専用エリアを確保。豊富なフリーウェイト、ファンクショナルトレーニングエリア、高性能マシンを組み合わせることで、飽きのこない環境を提供します。
パーソナルトレーニング用ゾーン:トレーナーがクライアントと1対1で動きのあるトレーニングを行えるよう、広めのスペースを確保。ケトルベル、レジスタンスバンド、スレッドなどの小型器具も近くに配置し、トレッドミル周辺のコーチングスペースも忘れずに確保しましょう。

ブランド価値との一貫性
ジムのレイアウトは、そのブランドのアイデンティティやミッションを反映すべきです。ラグジュアリー志向のフィットネスクラブなら、上質な仕上げやムード照明、ブティックのような空間演出を重視。一方で、ハードコア系のストレングスジムなら、スチールの梁やコンクリート床などインダストリアルなデザインが映えます。カラースキーム、サインデザイン、床材の選定に至るまで、ブランドの個性を一貫して表現することが大切です。
スマートなマシン配置
マシンを筋群別にグルーピングすることで、論理的な導線が生まれ、ピークタイムの混雑も軽減されます。
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上半身ゾーン:チェストプレス、ショルダープレス、ラットプルダウン、ローイングマシン
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下半身ゾーン:スクワットラック、レッグプレス、ハムストリングカール、カーフレイズ
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全身・ファンクショナルトレーニング:ケーブルマシン、TRX、メディシンボール、ケトルベル
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ヒップ・ボディメイクゾーン:Life Fitness Powermill や Symbio Elliptical などの有酸素機器を含む臀部中心のトレーニングエリア
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コア・ストレッチゾーン:差別化を図れるオープンスペースに専用器具を配置
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リカバリー&ウェルビーイングゾーン:入退室エリア付近に静かな回復エリアを設置し、再来訪を促す
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パフォーマンスゾーン:特定コミュニティ向けのカーディオ・アスレティック系エリア
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ヘルステスティングゾーン:体組成測定・健康チェック・コンサルスペースを設置し、包括的な健康管理ニーズに対応
このようにテーマごとにゾーンをまとめることで、会員はスムーズにトレーニングを進められ、待ち時間の短縮と満足度向上につながります。

パフォーマンス・ストレングス&ファンクショナル ゾーン
本格的なリフターやコーチに対応するパフォーマンス・ストレングスゾーンには、パワー・ラック、デッドリフトプラットフォーム、ヒップスラストステーションを完備。ファンクショナル・トレーニングエリアには、スレッドトラック、バトルロープ、プーリー、リグ、プライオボックスなどを設置し、アスレティックかつ高強度なトレーニングが可能です。ブランド価値に沿ったシンプルなデザインにすることで、威圧感を与えない空間を作ります。
ライトコーチング&コア専用スペース
初心者やグループセッション向けの「ライトコーチングゾーン」は、入口付近やカーディオエリアの脇に設けるのがおすすめです。ダンベル、ベンチ、ケーブルマシンを少数配置し、サポートが受けやすい環境を作ります。また、コア・腹筋ゾーンには、バランスボール、マット、ローマンチェアを設置し、ストレッチエリアやリカバリーゾーンに隣接させることで、動線の自然な流れを生み出します。
スムーズな導線とアクセス性の確保
ジム運営で最も多い失敗のひとつが、「狭く、複雑で、動線の悪い設計」です。理想的なジム設計では以下の点を重視しましょう:
- マシンやゾーン間に十分な通路を確保
- 鏡を効果的に配置し、視界と空間の奥行きを演出
- すべての会員が安全かつ快適に利用できるアクセシビリティ設計
「Gymspiration」がすべてを変える
ジムのデザインは、モチベーション・効率性・会員体験すべてに直結します。 エルゴノミクス(人間工学)や導線設計といった「科学」と、照明・ブランド表現といった「アート」を融合させることで、 会員を圧倒するのではなく、インスパイア(刺激)する空間をつくり出せます。 よく考え抜かれたレイアウトとデザインは、 会員の定着率を高め、トレーニング体験を向上させ、ブランドの信頼性を強化します。
「Gymtimidation(ジムに行くことへの恐れ)」よりも「Gymspiration(ジムで刺激を受ける体験)」を。 勝つのは、常に後者です。