デッドゾーンからデスティネーションスペースへ
従来のジムの概念が、いま大きく変わりつつあります。
これまでのように有酸素マシンやウェイトラックが整然と並ぶだけの空間ではなく、現代のフィットネス施設は「ライフスタイルハブ」へと進化し、会員がどのように動き、回復し、ウェルネスと関わるか――そのすべてを再定義しています。この変化の中心にあるのが、これまで活用されてこなかった「デッドゾーン」を、活気ある高付加価値エリアへと生まれ変わらせる取り組みです。そこでは、単なるトレーニングを超えた新しい体験が生まれています。
これは一過性のデザイントレンドではなく、「新しいフィットネスの価値観」です。ソーシャルメディアルーム、リカバリーラウンジ、生物親和的(バイオフィリック)デザイン、コミュニティゾーン――こうした要素を融合させることで、革新的なジムは、フィットネス・人とのつながり・ブランドへの愛着が交わる“没入型環境”を創り出しています。
1. 「設備」から「体験」へ:会員の期待値の変化
今のジム利用者が求めているのは、単なるマシンや設備ではありません。「意味」「雰囲気」「自分のライフスタイルとの共鳴」を感じられる場所が求められています。以前は見過ごされていた廊下の端や空きスペースなどの“デッドゾーン”が、いまやブランドのストーリーを語り、コミュニティを育むための重要な空間となっています。
体験型フィットネスの本質はとてもシンプルです――“空間のすべてに物語がある場所は、会員が長く滞在し、深く関わり、また戻ってくる。”実際、業界データによると「コミュニティとのつながり」を感じる会員は、そうでない会員に比べて3倍も長く継続する傾向があるといいます。
2. ソーシャルメディアルーム:シェアしたくなるフィットネス体験
Z世代やミレニアル世代にとって、「SNSに投稿されない出来事=起こっていないこと」と言っても過言ではありません。実際、約80%のZ世代・ミレニアル世代が、自分のトレーニング内容や成果をInstagramやTikTokなどにシェアしています。つまり「SNS映え」は、現代のフィットネス体験に欠かせない要素なのです。
先進的なジムでは、こうした行動を踏まえ「ソーシャルシェアのための専用スペース」を設けています。自然光が差し込む撮影エリア、ブランドロゴやハッシュタグが映える背景、リングライトや動画用機材、さらにはインフルエンサーとのコラボレーションなど。これらは単なる“フォトスポット”ではなく、ユーザーが自ら発信する強力なマーケティング装置です。会員が撮影・投稿する一枚一枚の写真や動画が、自然で信頼性のあるブランド認知の拡大につながっています。
さらに、これらのスペースにはもう一つの目的もあります。最近では、一般会員が意図せず他人のSNS動画の背景に映り込んでしまうことへの不満も増えています。そのため「ソーシャルメディアルーム」を設けることで、撮影を希望する人とそうでない人のプライバシーを守りながら、双方に快適な環境を提供することができるのです。
3. リカバリールーム:ワークアウトの先にあるウェルネス体験
フィットネスの概念は、単なるトレーニングから「回復」「メンタルヘルス」「長寿」へと広がっています。それに伴い、ジムの中に高級ラウンジのようなリカバリーゾーンを設ける動きが加速しています。遠赤外線サウナ、クライオセラピー、アイスバス、呼吸法を取り入れたブースなど――。これらは「トレーニング後のクールダウン」を、付加価値の高いウェルネス体験へと変えるものです。いまや、リカバリールームは会員定着のための新しい武器となっています。
4. バイオフィリックデザインとリビングウォール:自然の息吹を取り入れる
自然を取り入れた空間デザインは、見た目の美しさだけでなく心理的効果も大きいものです。リビングウォール(植物を使った壁面装飾)や木材・石材といった自然素材は、トレーニングの緊張感を和らげ、心身を落ち着かせる効果があります。この「グリーンフィットネス」の潮流は、サステナビリティや空気環境の改善、会員のウェルビーイング向上にもつながっています。こうした要素は、ジムの“見た目”を際立たせるだけでなく、会員体験に対する深い配慮を伝えるメッセージでもあるのです。
5. コミュニティコーナー:空間に「居場所」を生み出す
重要なのは「広さ」ではなく「活かし方」です。居心地のよいソファ席や共有テーブル、コワーキングスペースのような小さな空間を設けるだけで、会員は自然と集い、交流が生まれます。クラス後の雑談、会員同士のイベント、ブランドポップアップなど、こうした“サードプレイス(家でも職場でもない第三の居場所)”が、会員との絆を深め、ジムを「ライフスタイルパートナー」として位置づけるのです。実際、コミュニティや交流を重視するジムでは、約70%の会員が「それが継続の理由」と回答しているというデータもあります。
まとめ:次の10年で選ばれるジムとは?
これからの時代に成功するジムは、最新のマシンをそろえた場所ではありません。「目的を持ってデザインされた場所」です。見過ごされがちなスペースを活用し、SNSでシェアしたくなる、リラックスできる、回復できる、そして五感で楽しめる体験空間に変える――。それは滞在時間を伸ばすだけでなく、コミュニティを育て、ブランドの信頼を築くことにつながります。体験が価値になる時代において、“空間が語るストーリー”はもはや贅沢ではなく、戦略的必須要素です。
私たちは、その実現をお手伝いします。専門チームが、現代の会員が求めるニーズを満たし、フィットネスの未来を先取りするフロアデザインを提案します。
あなたの施設に新しいストーリーを――ぜひ、私たちと一緒に創り上げましょう。