パフォーマンスを生み出すフィットネス空間デザイン
フィットネスの世界では機器が注目を集めることが多いですが、実際に人々の動きやモチベーション、そして「また来たい」という意欲を左右するのは「空間」です。
Life Fitness / Hammer Strength の施設デザインマネージャー、ケイリー・スタイルズは、ブランドのビジョンとトレーニングの目的を“空間”という形で具現化するリーダーです。カスタムロゴ入りラックからモジュラー型トレーニングゾーンの設計まで、彼女とチームは一つひとつのレイアウトを通じてフィットネスの未来をデザインしています。
施設デザインの取り組み
Q: Life Fitness / Hammer Strength のデザインサービスについて教えてください。
ケイリー:
当社では、初期の空間プランからレイアウト設計、詳細な3Dビジュアライゼーションまでを網羅した総合的な施設デザインサービスを提供しています。最先端の設計ソフトを活用し、ブティックスタジオから3,000㎡を超えるパフォーマンスセンターまで、リアルな2D/3Dの空間イメージを作成します。
私たちのチームは、クライアントと直接やり取りするのではなく、営業担当者と密接に連携します。彼らが施設のトレーニング方針やブランドアイデンティティ、利用者体験の要件を整理し、私たちへ共有。その情報をもとに、施設のビジョンや運営ニーズにぴったり合ったデザインを実現します。
Q:Life Fitness / Hammer Strength のデザインの強みは?
ケイリー:最大の強みは、「トレーニング理論の深い理解」と「機器を戦略的に配置する設計力」です。私たちは単にマシンを並べるのではなく、トレーニング目的を支え、ビジネス成果につながる“機能的で魅力的な空間”を作ります。
また、社内の製品開発・マーケティング・セールスなど各チームとの連携により、最新の機器やトレンドを常に反映できるのも強みです。
Q: デザインが各クライアントの特定のニーズや目標をどのように反映していますか?
ケイリー: 営業チームから、施設のターゲット層、プログラム内容、面積条件、デザインの方向性といった基本情報が届きます。それを基に、将来的な拡張やトレンド変化にも対応できる柔軟なレイアウトを設計します。
Q: 印象に残っているお客様からのフィードバックはありますか?
ケイリー: 私たちは普段、裏方としてプロジェクトを支える立場なので、フィードバックは主に営業担当者を通じて届きます。その中には非常に嬉しい声が多くあります。ある営業担当者からは「高品質なレンダリングを迅速に仕上げてくれるおかげで、これまで以上に案件を勝ち取れている」と言われました。
別の担当者は「スピードと品質が新しいチャンスを生み、信頼を築く鍵になっている」と話してくれました。まさにそれこそが私たちの目指すところです。デザインの力で営業チームに優位性を与え、施設の意思決定者からの信頼を獲得することです。
私たちの目標は、空間をリアルに感じられるビジュアルやレイアウト図を提供するだけでなく、営業担当者が顧客とより深い対話をする時間を確保できるようにすることです。
ある担当者がこう言ってくれました——「あなたたちの迅速な対応と高い品質のおかげで、顧客としっかり話す時間が生まれています」。それは私たち全員にとっての「勝利」です。
トレンドとイノベーション
Q: 現在、もっとも注目されているデザインのトレンドは?
ケイリー: 「カスタマイズ」と「モジュラー化」です。ブランドロゴ入りのラックやプレート、専用カラーのダンベルなど、施設の個性を表現する要素が求められています。特に大学やアスリート施設では、ビジュアルアイデンティティが誇りと結束を高めます。
また、モジュラー型トレーニングゾーン「LFX」など、スモールグループでのトレーニングエリアのニーズが増えています。これにより、空間効率とメンバーのエンゲージメントを両立できます。
Q: LF/HSでは、どのようにテクノロジーやイノベーションをデザインに取り入れていますか?
ケイリー: 私たちは、最新の3Dレンダリングソフトを活用し、完成前の段階から施設の全体像をリアルに体感できるようにしています。また、プロダクトイノベーションチームと密接に連携しているため、ケーブルマシンの新しい構成や最新のコンソールテクノロジーなど、最先端の機能をいち早く把握し、レイアウトに反映することができます。こうした取り組みにより、常に時代を先取りしたデザイン提案を行っています。
デザイン上の課題と解決策
Q: 施設デザインにおける主な課題と、その解決方法を教えてください。
ケイリー: ひとつは、古い建物など構造上の制約がある空間への対応です。天井が低かったり、柱が多かったりする場合でも、視線の抜け方や導線、マシン配置を工夫して、機能的で快適な空間をつくり出します。
もうひとつの課題は、「見た目の美しさ」と「長期的な耐久性」のバランスです。多くの施設が“映えるデザイン”を求めますが、チョークや汗、重量からの衝撃などハードな使用に耐えられることも重要です。私たちは特定の素材ベンダーを推奨することはありませんが、耐久性を考慮したレイアウトや素材選定のヒントを盛り込むことで、美しさと実用性を両立できる空間づくりをサポートしています。
Q: デザインは会員体験にどのような影響を与えますか?
ケイリー: デザインは、施設に足を踏み入れた瞬間の印象から、マシンを使うときの安心感まで、すべてに影響します。導線がわかりやすく、ゾーニングが明確な空間は、初めて訪れる人でも迷わずトレーニングを始められます。また、ブランドを反映した空間デザインは、会員との感情的なつながりを強め、愛着を生み出します。
Q: 会員のモチベーションや満足度を高めるデザイン要素とは?
ケイリー:モジュール式のストレングスポットや、カーディオ/ストレングス/リカバリーといったエリアの明確な区分、そしてコミュニティを育むソーシャルスペースが鍵になります。会員は単に「運動する場所」を求めているのではなく、何度も通いたくなるような“体験のある空間”を求めています。
持続可能性とアクセシビリティ
Q: サステナビリティへの取り組みは?
ケイリー:私たちにとってのサステナビリティは、「長く使えるデザイン」から始まります。日々の激しい使用に耐える高品質なマシンと耐久性の高いレイアウト設計により、頻繁な改修や買い替えを減らし、コスト面でも環境面でも持続可能な空間づくりを実現しています。
施設設計の未来
Q:今後のフィットネス施設デザインはどのように進化していくと思いますか?
ケイリー:よりパーソナライズされています。より没入感のある、非常にリアルな 3D レンダリングなどの高度な視覚化ツールにより、顧客が 1 つの機器を設置する前に自分の空間がどのように見えるかを明確に想像できる未来が期待されます。これにより、各施設固有のニーズやブランドビジョンに合わせてデザインを調整することが容易になります。
Q: その未来に向けて、LF/HSではどのような準備をしていますか?
ケイリー: 製品面とデザイン面の両方でイノベーションに投資しています。デザインチームでは、よりリアルで没入感のあるレンダリング技術の開発を進め、完成後の姿を限りなく正確に再現できるよう取り組んでいます。これにより、お客様が安心して意思決定でき、理想の空間を共に形にすることが可能になります。
都市型 vs 郊外型デザイン
Q: 都市型と郊外型の施設デザインでは、どのような違いがありますか?
ケイリー: 都市型施設では、限られたスペースを最大限に活かす工夫が求められます。収納や導線、ゾーニングをより意識的に設計し、一平方メートル単位での最適化が重要になります。一方で郊外型はスペースに余裕があるため、エリアごとの流れや全体のバランス設計に重点を置きます。
Q: どちらのタイプの施設でも、デザイン前に確認すべきことは?
ケイリー: まずはターゲットとなるユーザー層、プログラム構成、そして施設が目指す「成功の形」を明確にすることです。それらが明確であれば、通路幅や機器配置、ゾーニングの方向性まで、すべての判断がスムーズになります。
Q: 新しい施設をデザインする際、最初に考えるべきことは?
ケイリー: 最初に考えるべきは「ユーザー体験」です。どんなトレーニング体験を提供したいのかを明確にし、それに基づいて導線、マシン配置、将来的な拡張性を設計します。初期段階の判断が、その空間の使いやすさと魅力を長年にわたって左右します。